最近、いろいろな所で筋膜リリースという単語を目にします。これって何なんでしょう。
事の始まりは、ある医師が言い出したことです。肩こりや腰痛に対してエコーを見ながら筋肉と筋肉の境界部に生理食塩水を注射すると痛みが取れたことから、筋膜をリリース(はがす)していると考えて名付けたのではないでしょうか。これが結構受けてあたかも真実かのように広まり、テレビや雑誌でも紹介されました。その後、他の職種の人が、注射せずに筋膜をはがして痛みをとると言い出し、本屋へ行くとこの種の本がいくつも並んでいます。しかしこれって本当なんでしょうか。ほとんどの整形外科医はこのことを信じていません。理由は実際、手術などで筋膜を日常的に観察していて、筋膜が癒着なんかしていないことを知っているからです。また、エコーでも筋肉と筋肉の間はスムースに動いていることは容易に観察できます。
実際、筋肉の間に注射をしても、筋肉の中に注射を拡散させても、痛みは同様にとれます。そのメカニズムはまだ確定していません。当院でもエコーを見ながら痛みを起こしている筋肉周囲に薄い局所麻酔薬を注入して痛みをとりますが、トリガーポイントブロックとも言います。針治療にしてもどうして除痛できるのかまだ完全には解明されていないのが実情なんです。